大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)174号 判決

記録に依れば、原審は挙示の証拠を綜合し、「被告人は原判示日時原判示の場所に於て、松井作次郎外二名と共に、花札を使用し金銭を賭し、俗に馬鹿めくりと称する博奕を、常習として為したものである」旨の事実を認定し、刑法第百八十六条第一項、第十九条第一項第一、二号第二項等をこれに適用し、被告人を懲役参月に処した上、押収に係る現金九千四百六十円(証第一号)を没収する旨の判決を言渡したものであることが明かである。弁護人は「被告人は証第一号の現金を、債務の弁済その他の用途に充てる目的で、所持していたものであり、本件犯行の用に供し、又は供しようとする意図の下に、叙上の現金を所持していたものでない。」旨主張し、また、原審第二回公判調書中被告人の供述記載に依れば、被告人は犯行当日自宅を立出るに際し、他の用途に充当する目的で、金九千七百円(証第一号はその一部と認められる。)を携行したことを、必ずしも窺知し得ない訳でないけれども、しかしながら、司法警察員作成現行犯人逮捕手続書の記載、司法巡査作成捜索差押調書の記載、原審公判廷に於ける被告人の前記の供述、司法警察員並に検察官の作成に係る被告人の各供述調書の記載検察官作成の松井作次郎、尾川重松の各供述調書の記載等を綜合すれば、被告人は、賭博の用に供すべき金員と、然らざる金員とを区別分離することなく、叙上の現金全部を、そのまま携帯して賭博の席に臨み、所携の金員を賭金として使用した結果、その内二百四十円を既に喪失し、しかも賭博を中止しようとせず、なお残余の金員を賭銭として使用しようとしていたこと、すなわち、被告人は証第一号の現金を、少くとも、犯行の用に供しようとしていたものであつたことを認定するに足り、従つて、原審は事実を誤認し、延いて法令の適用を誤り、没収すべからざる物件に対し、没収の言渡をしたものでないから、論旨は理由がない。

(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!